中華民国(台湾)の首都で、アジア有数の都市のひとつ。緯度では沖縄本島よりも南側に位置し、亜熱帯気候で年間を通じて日本よりも暖かい。日本人のアジアの旅行先としては、中国、韓国に次ぐ人気で、その増加率は年々高まっている。
古くから日本文化との親交があり、建築、カフェ、雑貨など、見どころが多い。
ここ数年、「台湾に行ってきました!」とよく耳にするようになりました。私が運営する雑貨店carbonではヨーロッパ雑貨を中心に扱っているためか、アジア方面には疎く、自分にはまったく縁のないお国に感じて、「台湾、どうだった?」って言葉すら出てくるコトがありませんでした。
海外に行くときはどうしても「carbon」の屋号を背負ってしまう傾向があり、ついデザインや街並みがcarbon好みの行き慣れたところばっかりを選ぶようになっていました。いつのまにか、初めて外国に行ったときのワクワクやドキドキを忘れて、冒険心の欠片もない大人になっていたのです。
そんな縁遠かった台湾に、なんと去年(2016年)は短いスパンで2度も行く機会に恵まれ、9月に初・台北、12月に2度目の台北を体験してきました。この特別企画のタイトルを『carbon 台北の旅』にしたのは、きっと私の旅話は商売人の目線が滲み出てしまって、「carbon」とは切っても切り離せないと思い、ココは潔くお店の名前を入れることにしました。
carbonをご存じない方のために少し自己紹介。carbonは大阪の谷町六丁目という場所で1999年にオープンしたお店です。フランスで買いつけた雑貨や、品質にこだわった国産のおもちゃや家具、最近ではハワイやサンフランシスコ、ポートランドなどの商品も並んでいます。ピアノ教室も併設していて、今年で18年目を迎える実はけっこう老舗なのです。
9月に急遽決まった台湾行きは、同業の雑貨関係の仕事仲間からのお誘いでした。仲間内では旅慣れている方の私は、たいていホテルや航空チケットの手配を担当するのですが、今回はガイドブックを1冊も買うことなく、パスポートと送られてきた航空券だけを持って、たまにはアテンドされる気楽な旅行を楽しむつもりで空港に向かいました。
ところが蓋を開けてみると…、やっぱり私は自分で旅の計画を立てないと落ち着かない性分のようで、最初の台北の旅があまりにも人任せだったことを深く後悔して、さっそく3ヶ月後の12月に台北のおさらい旅行をしてきました。そんなわけで、「carbon 台北の旅」では2016年2度の台湾旅行をダイジェストでお届けします。
台湾の桃園空港に到着して、台北市内まではタクシーでだいたい1200元程(約4000円)で、バスに比べる割高ですが、ここは荷物の多い女子の旅なのでちょっと贅沢。ホテルに荷物を置いたらスグに繁華街に繰り出して、カフェに入って3日間の旅の計画を立て始めました。フライトは関西空港から3時間ぐらいなので、移動疲れはまったくありません。
台北市内の大通りはよくある日本の地方都市と何一つ変わらない様子なのに、1本路地を入ると突然そのノスタルジックな表情を見せてくれます。日本ではもう見ることがなくなった懐かしい光景のひとつひとつを見逃さないように、360度カメラのシャッターを押していました。どんなカットを撮ってもヒキでもヨリでもフォトジェニックだから楽しくてしょうがない!
やはりアジアの街。韓国が舞台の草彅くん主演の映画『ホテルビーナス』にも似た雰囲気を感じました。この感じが好きな人なら、ガイドブックに載ってる小龍包や夜市やスパに頼らなくても台湾は十分楽しめると思います。
でも、そんなノスタルジーでひとくくりにできないのも台北の魅力で、建築やデザインなど現代的なモノもシッカリと見せてくれます。日本人の建築家もこぞって台湾に進出していて、ル・コルビュジェの影響も感じさせる丹下健三さんの「聖心女子高級中学」や、伊藤豊雄さんの「誠品書店」や「台北世界貿易センター広場」など、台北市内だけでも有名日本人建築家の建物がたくさんあります。
伊東豊雄さんの「誠品書店」は板南線の忠孝敦化駅から歩いて10分ぐらいの距離なのですが、周りにある池の水面に映る姿がとてもキレイなので、ここはタクシーで楽をせずにぜひ散歩がてら駅から歩いて行ってほしいデス。
よく考えてみてくださいね、日本から数時間のフライトで、こんな錚々たる建築家の作品が短い旅行で回れる範囲にあるのです。とても贅沢だと思いませんか?
台北での宿泊先は、海外旅行初心者の方には「ホテル・ロイヤル・ニッコー・タイペイ」がオススメです。日本語が通じるので、探しているモノを伝えればショップに電話をかけて在庫の確認までしてくれます。ラッピングの紐とかスピーカーとか…マニアックなものばかり頼んだにも関わらず、とても親切に対応してくれました。
台北駅から2駅の雙連駅から歩いてすぐなので、観光にも便利です。雙連駅の周辺には雙連朝市という市場があり、地元のディープな賑わいを楽します。
市内ではタクシーも気軽に乗車できますが、流しでは遠回りされたりすることもあるので、ホテルで手配してもらった方がいいようです。ホテルの前から乗ると名刺のような確認書を渡されるので、運転手さんも迂闊なことはできないような仕組みになっているのかな~って感じデス。もちろん、徒歩圏内にカフェや雑貨屋さんもたくさんあります。地下鉄も10年くらい東京に行ってない大阪人が東京メトロに乗るよりは簡単なんじゃないでしょうか?行きたい場所をちゃんとリサーチしている方には、地下鉄は便利で安い交通手段として使えます。
12月、2度目のときも迷わずホテル・ロイヤル・ニッコー・タイペイに予約を入れようとしたのですが、満室でキャンセル待ちもできず、冒険心ゼロの私は前回と同じエリアで探すことにしました。ホテル・ロイヤル・ニッコー・タイペイから数100メートル先に、アンバサダーグループが経営する「アンバ台北中山」を見つけて、ニッコーと比べてもかなりリーズナブルだったから少しイイ部屋タイプに泊まりました。みんなが集う階ごとのソーシャルスペースもひつひとつ全部デザインが違っていて、このホテルには台湾をオシャレに感じさせてくれる仕掛けがたくさんありました。窓からの景色も異国情緒に溢れていて素敵です。
さて、ちょっとココで仕事モードになってインテリアの話をしましょう。
インテリアデザインのフリ幅は広く、どこに行ってもイイ意味で期待を裏切ってくれて楽しめました。雑多な感じになりがちなアジアの街並みの中で、デザイナーズは統一感を出すのに苦戦しているようにも見えますが、もしかしてそれもワザとで、逆に「崩しの美学」のようなモノがあるの?
どこを見てもほんの少しインテリアのバランスがおかしいんです。一緒に台湾を旅行した友人と分析したところ、デザイナーがしっかりデザインした後に、季節に応じて現場のスタッフが「ここにコレ置いてみる?」みたいな感じで、だんだん崩れていってるんやで~、という結論に至りました。最後の方にはそんなハズしてる箇所を見つけるのが楽しみにすらなってきました。こんなに高級なスペースにこの花瓶にこのポインセチアなん?とかね、、、写真を撮るときにそれをドカせてパシャと撮ったりしていました。帰りのタクシーの中で「ポインセチアをテーブルの下に置いたままや~」とかってことも(すみませーん、、)。
台北の雰囲気と空間が繋がるようなところに行くと、こりゃマネできないわ!って感動してしまうことも多々ありました。街中の若者が作りだす個人店にはそんな居心地が良いところがたくさんあります。レトロとモダンが混ざりあって、色褪せたバランスのイイ空間にはまったく隙がない。
亜熱帯だから街の植物もイイんですよね~。ビルから大きい木がニョキって出てたりするところが多くてかわいかったデス。沖縄とよく似ているんだけど、日本には良くも悪くも「建築基準法」がシッカリあるから、同じには絶対にならないですね。
仕事の合間にちょっとカフェで一休み、というのはいつも日本でやっています。でもせっかく台湾に来たからには、ゆっくりとその場の空気感も楽しんで長居したくなるような所で台湾茶をたしなみたいものです。Instagramの為のタッチ&ゴーは一切禁止!という旅です。笑
台湾のお茶は、味そのものを楽しむだけではありません。じっくりと時間を掛けてお茶を煎じて、お喋りしながらその場の雰囲気を楽しむためのコミュニケーションのようなものなのです。もともと中国で生まれたお茶文化ですが、このような洗練された楽しみ方は台湾で発展したそうですよ。
茶器や作法にもこだわるのが台湾流。
街には茶芸館と呼ばれるお茶処がたくさんあり、それぞれの空間に合ったお茶の楽しみ方があります。ニューヨークのカフェも顔負けなオシャレな店もあれば、伝統ある古い建物で悠久の時に思いを馳せながらお茶を頂くのもまた一興。
今回の旅では行けませんでしたが、台湾には建築家の藤森照信さんが作った茶室がいくつもあるそうです。台湾新竹の水に浮かぶ茶室「入川亭と忘茶舟」、アートスペース華山1914文創園区内にある宙に浮かぶ茶室「望北茶亭」など、なんだか情景を想像するだけでワクワクしてきませんか?台湾のお茶文化、まだまだ奥が深そうです。
2回とも雑貨人との旅だったので、道中雑貨についてはかなりシビアな意見が飛び交っていました。
親日感はどこの国よりも強く、ホンキで愛されているな~っと感じましたが、日本からの影響が強すぎるのは玉に瑕で、店先に並んだ商品の多くは既視感がありました。
今回一緒に旅したふたりの友人は、雑貨店オーナーと雑貨メーカー勤務なので、ふたりとも自社の商品が台北で2割増しの金額で売られているのを見て驚いてました。まぁ、これは私たちの職業病のようなもので、つい原価とか仕入先とかのことを考えてしまうんです…。一般の方は充分に楽しめると思います。
ということで、台湾の雑貨を大量仕入れ!というわけにはいきませんでしたが、茶器とお茶とカラスミ、カゴ…お買いモノはそんな感じでした。今回の旅のヒット商品は、「福」って書いてるプアール茶。スゴくカワイくて、美味しかったデス。台湾らしさの出ているパッケージについつい大人買いしました。
台北市内のお買いモノエリアは大きくわけて、中山区、富錦街、迪化街、信義区、大安区。この5つの場所で私が感じた雰囲気をInstagramでご案内いたします。
旅に出るとき、その国で撮られた映画を観てみるのもオススメです。たいていその土地の一番イイところが舞台になっているし、旅行中に映画のロケ地を回ってみるのも宝探しみたいで楽しいですよ。そして何より、行く前に観たときと、帰ってきてからもう一度観返したときとで、印象が180度違っていることがあるのも楽しみのひとつなんです。
台湾の若者たちのみずみずしい青春を描いたトム・リン(林書宇)監督の『9月に降る風(2008年)』や、ギデンズ・コー(九把刀)監督の『あの頃、君を追いかけた(2011年)』にはザ・台湾な街並みがたくさん出てきます。
映画ファンのあいだでカルト的な人気を誇るエドワード・ヤン(楊德昌)監督の『恐怖分子(1986年)』や『カップルズ(1996年)』などでも、リアルな台湾を知ることができます。
行こうと思えばスグに行ける!
気持ちに余裕を持って、あまり詰め込み過ぎないことが台湾旅行のコツのような気がします。今回行けなかったところは次回行く、ぐらいのつもりで、ゆったりとした時間を過ごすのが台湾の正しい楽しみ方だと思います。
足を延せば台北以外にも台南、台東、台中、高雄、とまだまだ楽しいスポットがたくさんありそうです。最近の台湾ブームでガイドブックなどがたくさん出ていますが、どちらかと言えば、私のようにまったく興味のなかった方にも「ちょっと台湾行ってみようかな」と思ってほしくて、台湾ビギナーのための台北ガイドでした!
9月の宿泊先。日系ホテルということもあり、初めての海外旅行でも安心です。宿泊客が無料で利用できるプールやスパもあるので、ホテルでゆっくりしたいという方にも最適。
12月の宿泊先。1970年代の古いオフィスビルをリノベーションして、2015年にオープンしたばかり。デザイナーの郭英釗氏が監修し、ホテルの理念である「エコ、ハイテク、創作」をモチーフにしたユニークなデザイナーズホテルです。
台湾中部で5代続く老舗茶屋が立ち上げたブランド遊山茶訪のアンテナショップ。日本風家屋にリノベされていて、茶処も3、4ヵ所ほどあるようでそれぞれに楽しめるしつらいになっています。お手洗いのドアも鍵もカワイさ満載でした。
台北で人気のエリア迪化街に面した築100年近い歴史的建造物の2階にある茶芸館。1階が茶器屋さんで、その奥にもカフェスペースがありますが、オススメは2階です。2階でお茶したら帰りには1階で茶器を買いたくなるっていう、アレです!
もれなく私も2階で使われていた茶器がほしくなって、閉店10分前に「やっぱりこれ買う」とダッシュで1階に駆け下りたのですが、急須の柄の部分が天然木だったので結局閉店時間を押して在庫を全部並べてくれました。
5種類の中から選んで梱包を待っていたら、2階から友人が下りてきて「どれどれ~」ときた。そんなこともあろうかと思い撮っておいた写真を見せると「う~ん、、、コレはないかな~」っと1番に指差したモノが今まさに目の前で梱包されているコで…、「オナカの中で互いに、コイツ趣味悪って思ってんねんで~」って爆笑しました。
伊東豊雄設計の「誠品書店」がプロデュースするホテルやレストランを併設する総合文化的施設。
その顔とも言える1階のラウンジは、ゴージャスなインテリアで優雅な気分にさせてくれます。お茶1杯で何時間ねばってもスタッフはずっとニコニコしてくれる。子供になった気分で自由にさせていただきました。手に取れる本もたくさん置いてあって、中には貴重な絶版書もあるそうです。
「誠品書店」は24時間営業。ホテルのラウンジなので、遅い時間に「どこ行く?」ってなったときにも安全でオススメです。敷地内には緑に囲まれた池もあって、散歩もできます。B1にある「Chocoholic」の塩チョコクッキーも美味しすぎました。
References & Thanks to
1
1月17日公開
台湾が今人気急上昇。カフェに雑貨に建築に、見どころ満載で何度でも行きたくなる街、台北。そんなアジアのお隣の街に、大阪の老舗雑貨店carbon店主が初めて訪れました。carbonがアジア?そんな先入観を捨てて台北の街に繰り出してみると、そこには思わず納得の魅力がありました。KAMAKULANI特別企画、海外旅行ビギナーのための台北ガイド!
2
11月14日公開
carbonの4年ぶりのフランス遠征はパリから500kmのワインの産地、ボルドー!「フランス人がいま一番住みたい街」とも言われる自然豊かな郊外都市のボルドーは、食べモノがおいしくてとっても長閑な町でした。パリとは一味違う魅力を楽しめるボルドー。この町には深いワインのような魔法的な時間が流れています。
3
12月5日公開
carbonフランスの旅、前回のボルドー編に続いて、今回はパリへ。26年前初めてパリの街に足を踏み入れたときから、きっと色んな運命に導かれて、carbonは谷町六丁目の小さなパリになったのです。今年のパリ遠征ではついにcarbonの生みの親とも言える憧れの雑貨店のオーナーとお話しすることができました!