こんにちは。フリーエディター&旅するブログの先生、「編集脳」アカデミー主宰の藤岡信代です。老舗出版社の編集者として22年、インテリア雑誌の編集長を5年務めていました。
収納が苦手、お片づけができない私の弱点は、「思い込みがあるからでは?」という発想からスタートしたこの連載、最終回は、これまで紹介してきた収納上手さんの事例から私が気づいたことをまとめたいと思います。題して「収納がラクになる家のつくりかた、5つのポイント」。
この連載に登場いただいた収納上手さんの共通点は、「ものを使いやすく収納している」というところでした。
たとえば、食器の収納場所をわざわざ分けているのも、自分が得意な引き出し式にしているのも、「ラクに取り出して、ラクにしまうため」。その最終的な目的は、「ものを気持ちよく使うため」なんですよね。あ、もちろん、雑誌の収納特集や収納本には、「ものは使うためにある。だから使いやすくしまうのが基本」とさんざん書かれていますし、それは私も知っています。でも、それが実際に、どこまで腑に落ちているか?その“腹落ち具合”の差が、収納の上手・下手の差になるのかなと思うわけです。
私自身は、無意識のうちに、収納する場所を探してから「どうやってしまうか?」と考えているなぁと感じたのです。まず、「収納場所」という思い込み・囚われがあるのですね。
収納上手さんは、まずこの囚われがないことが多いです。その代表は、暮らしのアドバイザーの土井けいこさん。土井さん宅には、「ここに○○が置けると便利だな~」という発想でつくられた収納の仕組みがあちこちにあります。この連載では、洗面脱衣室に下着の収納がある、というお話を紹介しました。
「場所がなければ、つくる」というコメントも印象的でした。そう、場所ありきではないから、なければつくればいいのです。それも、いわゆる収納家具のようなものを使うとは限りません。土井さんの場合は、バー1本を壁にとりつけただけでも“収納場所”になるんですよね。冒頭の写真の、ふだん着の収納がまさにそう。
片づける ⇒ ものをしまう(収納)⇒ 場所(収納グッズ)が必要。この発想の流れを変えるには、どうしたらいいのだろう?と考えていて、思いついたのが、「ものを置く場所を決める」というフレーズでした。
「しまう」のではなく、「置く場所を決める」(いわゆる定位置や“ものの住所”を決める、ということですね)。
「どこにしまう?」と自分に問いかけたら、無意識に「収納できそうな場所」を探してしまうけれど、「どこに置く?」と問いかけたら、しまうわけではないから「いちばんラクに置けて、便利な場所」を考えます。
たとえば、私はとにかく書類の整理が苦手なのですが、頻繁に手にとって確認する書類がなぜか本棚に置いてあって、「見たい」と思ったら立って5~6歩、歩いてファイルを手に取って見る。これ、「書類ファイルをしまうなら本棚」と考えてしまっている典型例です。
これを、「どこに置くのが便利?」という問いに変えたら…
「机の端に積んでおく」と答えます(笑)。ま、さすがにそれだと邪魔なので、手が届く場所に立てて置くことを考えるでしょう。そう考えると、
・机の端に積んでおく
・机の上にブックエンドをおいてファイルを立てる
・手の届く場所に棚を置き、そこに立ててしまう
・机の下にファイルを入れる場所をつくる
などなど、収納場所やしまう方法は、いくらでも出てきます。お~、自分で書いていてもびっくり!そっか~。やはり考え方のちょっとした違いなのです。
今回取材にご協力いただいた3名以外にも、現役のインテリア雑誌編集者&編集長時代は、たくさんの方の収納方法を取材してきました。取材先の方たちが「収納を考えるときに、どう発想するか?」をまとめてみると、次のようなポイントがあると思います。
順に、解説していきますね。
これは冒頭でお話した、「ものを使いやすく収納する」という考え方に最もリンクすることです。どこで、何をするか?たとえば、「ダイニングテーブルで使う食器はダイニングに置く」というのもそうですし、「洗面脱衣室に下着を置く」というのもそう。使う場所に、使うものがあるのが、いちばんラク。「収納場所」への囚われをなくすために、いちばん最初に投げかけたい問いですね。
この発想は、私が、自分と収納上手さんとの差を最も感じたところです。収納が苦手なくせに、私は、収納方法をあまり工夫しない(苦手だから工夫しないのか?)。でも、収納上手な人は、最高の状態を目指すんですよね。
十熊みゆきさんは、食器がひと目で見渡せるように、引き出し収納にこだわっていましたし、北村めぐみさんはお子さんのおやつを人ごとに分ける方法にたどりつきました。それぞれに、「こうなったら最高!」というイメージがあったから、その収納方法にたどりついたわけです。
3つめのポイントは、「自分にとって覚えやすい」を大事にする、ということ。裏返しに言えば、一般的には同じグループとされるものでも、自分の覚えやすさ・使いやすさに反するのであれば、同じ分類にしないということでもあります。たとえば、土井けいこさんの食器収納がダイニングとキッチンに分かれているのは、世間一般の常識から言うと「非効率」かもしれません。でも、土井さんの使い勝手や、覚えやすさから分類すると、「ダイニングで使う食器=ダイニングの食器棚」、「キッチンで盛り付けに使う食器=キッチンの食器棚」となるわけです。そう言われると、うん、それがわかりやすい!と私は思うのですが(笑)、自分で気づかないんですよね~、これが。
ものを使いやすくするために収納方法を工夫する、という視点で考えると、よく使うものは分ける、という発想も出てきます。このテクニックは地味なので(笑)、たとえばお友達の家で見ても気づかないかもしれないのですが、日常で使う食器や文房具に応用すると、とても使いやすい。写真は、北村めぐみさん宅の食器収納ですが、家族が食事に使うカップとカトラリーが専用のトレーやケースに入っていて、さっとテーブルに運ぶだけでいい状態になっています。これ、わざわざ食器棚にしまっているというお宅は、案外、多いのではないでしょうか?毎回使うものは決まっているのだから、それだけの専用スペース、専用の収納をつくれば、その分ラクに取り出せます。文房具も、あえて使う場所に1セットずつ置く、という方法があります。よく使うものは特別扱いにするわけです。
最後のポイントは、「仕組み化する」ということです。収納上手さんは、ゴールに「考えなくても体が動く」「仕組みになっている」を考えていることが多い。ラクに出し入れできるだけでなく、脳もラクができる。動きの効率がよくなるので、時間短縮にもなります。つまり家事がラクになるんです。
ここまでいくと、やはりプロの領域か…と考えがちですが、やることは1~4の組み合わせです。どこで使うものかを考え、どうなっていれば最高かをイメージし、覚えやすい分類にして、よく使うものをセットする。それだけでも一つの仕組みになります。たとえば、ホームベーカリーで自家製パンを焼く北村めぐみさんは、パンの材料のストックは一つのカゴにまとめ、さらには1回分ずつ計って一つの袋に入れて保管しています。パンを焼くときは袋を一つ取り出すだけでいいし、材料がまとまっているので時間があるときに材料を計っておくのもラクちん。流れを収納方法に取り入れているんですね。
いかがでしたでしょうか?
収納の取材をすると感じることは、実は収納って「とてもクリエイティブな仕事」だということ。そして、考え方がちゃんとあって、それを学んだ方が早く上手になる、ということです。いまはお片づけが職業として広まっているので、収納の考え方、つくり方を教える講座もたくさんあります。私自身はなかなか収納下手を脱することができていませんが(汗)、いいなと思った収納方法を真似て、いろいろ工夫する時間はとても楽しい、ということは実感しています。
この楽しさを追求していったら、収納が上手になって、さらに楽しくなって家事も仕事もラクになって…。夢はふくらみます(笑)。
References & Thanks to
1
4月4日公開
久しぶりに引っ越しをしたら、見事に「片づけられないオンナ」に逆戻り…。そんな藤岡さんが書籍の取材を兼ねてライフオーガナイザーのサポートを受けて気付いたのは、収納に対する「思い込み」でした。収納すること自体が目的となって、「どう使いたいか?」を考えることを忘れていませんか?発送の転換で収納の苦手意識を克服しましょう!
2
5月9日公開
食器は食器棚へ。そんな当たり前の発想を疑ってみませんか?食器収納に適した場所は、毎日の食器の出し入れの動作にヒントがありました。「使いづらさ」をきっかけに収納を考えてみると、無理なく出し入れができるようになる場所が見えてきます。固定観念にとらわれず、しっかりと収納の理屈を考える。そんな新しい収納術を紹介します。
3
6月13日公開
暮らしのアドバイザー、土井けいこさんへの取材を通じて食器の収納術を研究中の藤岡さん。今回は、食器をダイニングルームとキッチンに分けて収納する土井さん流の収納スタイルの理由を考えます。食器を1カ所にまとめてしまうという固定観念を捨てて、使用頻度に応じて取り出しやすい場所にしまうことで、収納の目的意識が大きく変わりました。
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7月25日公開
しまい方の「仕組み」を考える。収納を目的別にまとめることで、しまう時も使う時も手間を省くことができます。例えば、収納の基準を「もの」から「人」に変えてみると、使うたびに分配するストレスが軽減しました。ライフオーガナイザーの北村めぐみさんに学ぶクリエイティブな収納術。
5
9月5日公開
何となくの思い込みで、しまう場所と使う場所が異なるものはありませんか?例えば下着。衣類と一緒にクローゼットにしまう人が多いようですが、実際に使う場所を考えれば洗面脱衣室に収納するという選択にも納得できます。先入観を捨てて、使う場所からしまうべき場所を考えてみましょう。
6
10月3日公開
目からウロコの収納術、最終回は総集編。片付けられない理由を見直してみると、収納に対する先入観が意外と多いことがわりました。「どこでどう使うか」にフォーカスを当てると、収納のあるべき姿が見えてきます。収納がラクになる5つのポイント、ぜひお試しください!