フランスの首都。ニューヨーク、ロンドン、東京と並ぶ国際的な大都市である。外国人観光客数が世界一の観光地としても有名で、ルーブル美術館、ポンピドゥセンター、エッフェル塔など、数々の観光名所がある。「芸術の都」という異名を持つほどで、数多くの歴史的芸術作品を生み出してきた。
2017年、carbonのフランスの旅はボルドーから始まりました。初めて訪れる南仏のワインの町で、魔法のように長閑な時間を過ごした後は、いざパリへ。
夏の終わりのフランス旅行。ボルドーを後にして、一路パリに向かいました。
パリはこれまでに何度も訪れていますが、私が大阪の谷町六丁目で経営している雑貨店「carbon」にとっては、切っても切り離せない存在の街です。思えば26年前、初めてこの街に足を踏み入れたときから、carbonの運命は決まっていたのでしょう。
初めてパリに来たのは1991年の12月19日。
そこで見たパリの街並みは、大阪とも東京とも違っていて、アパルトマン(マンション)が建ち並ぶ普通の生活圏のなかにお菓子屋さんや本屋さんやお惣菜屋さんがあって、そのひとつひとつがなんだかとってもキラキラして見えました。最近では日本でもそんな光景をよく見るようになりましたが、当時はまだ買い物といえばデパートか駅前の商店街という時代で、オシャレな個人商店は珍しかったのです。
海外旅行自体が今ほど気軽なものではなく、シャルル・ド・ゴール空港に着くとすぐに旅行会社の送迎でホテルに向かい、そこで帰国までのくどい説明を聞かされました。ようやく話が終わって解放されたのは夕方過ぎ。地下鉄6号線に飛び乗り、ライトアップされたエッフェル塔を眺めて「フランスに来たんだー!!」と実感して、またすぐにホテルに戻りました。
翌日の午前中はバスでの市内観光のお決まりコース。記念写真をバカみたいにたくさん撮って、それはそれでとっても楽しかった。このときに見たパリのクリスマスほどステキなイルミネーションを未だに見たことがありません。
そしてこの旅でポッと生まれた夢が「住宅街で雑貨屋をしよう!」でした。carbonをオープンするときに繁華街ではなく谷町六丁目を選んだ理由もまさにコレ。後にcarbonの大切なインスピレーションとなった、記念すべき初めてのパリでした。
その3年後、2度目のパリ旅行で出会ったのが、雑貨店「Pour la Vie – Boutique de Décoration」でした。この店があるパリ16区(別名Passy)は、セーヌ川に挟まれた閑静な住宅地です。地下鉄のパッシー駅からコスタ・リカ広場に向かって100mほど歩いたところにあるこの「Pour la Vie」は、なんとも気になる絶妙なセレクトのお店で、不思議な魅力を感じました。
その店で1番最初に買ったのは母へのお土産のイギリス製のティーカップ。10年ぐらいしてから「あのカップ、割ってしまったからフランスでまた同じモノを買ってきて」と言われるまで知らなかったのですが、とってもお気に入りだったそうです。
「Pour la Vie」は、アンティークもあれば、一見くだらないように見えるものも、素敵な一点モノもある、そんな店主の好みがぎっしりと詰まったお店です。「Pour」はフランス語で「〜のために」、「la Vie」は「人生」とか「生活」という意味で、「Pour la Vie」はまさに、日々の暮らしの彩りになるモノから、一生の宝物になるモノまで見つかるお店です。
パリには他にもステキだなーっと思うお店も、ラッピングやディスプレイがさりげなくオシャレなお店もたくさんあるのですが、この「不思議」と思える感覚こそが、今でも「Pour la Vie」に導かれてしまう秘密なのです。
その頃は、もっと知らないパリを見つけたくて、大好きだったイラストレーターこぐれひでこさんの『もっと!パリへ行こう(主婦と生活社)』を片手に、本に出てくるお店や楽しみ方をなぞるように散策しました。こぐれさんが友人の結婚式で行った「Blue Marning」というレストランがステキ!と書いてあって、どうしても行きたくて、初めてパリの環状道路の外に出た日のこともよく覚えています(その頃にしたらちょっとした冒険でしたから)。
今ではGoogleマップであらかじめ店の場所や外観を調べてから行くこともできますが、当時は文章だけを頼りに色々想像してから行くので、いざ目的の店に足を踏み入れるときには想像と現実の答え合わせをするような緊張感があって、みんな自分だけのドキドキを胸に抱えて旅行をしていたんですね、きっと。
その後も、こぐれさんの『パリを歩こう』やエッセイなどを読んで、新しいパリの楽しみ方を学びました。
1999年12月3日、carbonオープン。
通い続けたパリで拾い集めた感性は、色々なところでcarbonの一部となりました。フランス製の商品が多かったわけではないので、直接パリを感じらるようなモノは少ないかもしれないけど、創業当初のcarbonには私の中のパリがしっかりと息づいていました。一言では言い表せられない、複雑で、一筋縄ではいかないパリへの憧れが、carbonを谷町六丁目の小さなパリにしたのです。
ところが、自分でお店を始めてからは、パリに行ってもつい仕事目線になってしまい、昔のように純粋に楽しめなくなってしまいました。常にお客さまをイメージして買い付けできるお店をリサーチして、滞在中ずっと足がパンパンになるまで街を歩き続ける日々。パリを起点に郊外にも出かけるようになりましたが、やはり商材探しの旅はいつも何かに追いかけられているみたいで、辛かったのを覚えています。その頃私がいたのは、もうこぐれひでこさんの本のパリではなかったんです。
そんな最初の10年が過ぎて、2010年11月に初めてパリの雑貨ツアーに参加したときには、今回は一切仕事をしない!と心に決めて再びパリの土を踏みました。そのおかげで色んなコトがリセットされたのか、毎日友達のお土産を選んで、carbonの商品ではない荷物でスーツケースが一杯になっていく様子を見るのも新鮮でワクワクしました。
この年のパリ旅行をきっかけにして、私の中でまたパリを楽しむ気持ちが復活したのです。写真もビデオもたくさん撮って、その写真をcarbonのフライヤーやポストカードにしたり、美味しいモノをたくさん食べてちょっと贅沢してみたり、キモチに余裕が生まれたことで、一度は心が離れてしまったパリを再発見することになりました。
そして今年2017年、思いがけず訪れることになったパリで、ついにあの「Pour la Vie」のオーナーのおじさんと話すことができました。23年前に導かれるようにして入ったあのお店で、初めて買った母のティーカップのこと、この店に影響を受けて日本で雑貨店を始めたことなど、話が尽きることのないとても長い長い時間…。そして驚くべきことに、「Pour la Vie」とcarbonの商品セレクトのコンセプトはまったく同じだったのです。
「9月のメゾン・エ・オブジェ(編集部注:パリで開催される世界最高峰のインテリアとデザインの見本市。インテリア業界の「パリコレ」とも呼ばれている。)には必ず来なさい!」と、オススメのブースまで教えていただきましたが、パリっ子の激しい情熱に圧倒されて、そこからは手際よく会話を切り上げさせていただきました。笑!
今回「Pour la Vie」で買ったのはツバメの柄のワンピース。夏に寝室の白壁に飾りたい!と一目惚れ。相変わらずドキドキさせてくれるセレクトに本当にビックリさせられます。23年前に初めてこの店と出会ったときから、私はこのおじさんにハートを鷲掴みにされたままなのかもしれない。
ベル・エポックと呼ばれた古き良き時代のパリを舞台に、名物キャバレー「ムーラン・ルージュ」の誕生の物語を虚構を混ぜながら描いた作品。「カンカン」とは、19世紀のフランスの流行したダンスのことで、ロングスカートから覗く黒いストッキングが特徴。エディット・ピアフをはじめとする、当時の有名歌手が出演していることでも知られています。ヌーベル・ヴァーグ前夜の傑作として根強いファンの多い作品です。
文明堂のカステラのCMはこのカンカンダンスがモチーフになっています。
ヌーベル・ヴァーグの巨匠ゴダールの長編デビュー作。原案はフランソワ・トリュフォーという、フランス映画の代名詞のような記念碑的作品です。不良のミシェル(ジャン=ポール・ベルモンド)とアメリカ人のパトリシア(ジーン・セバーグ)がお喋りをしながらシャンゼリゼ通りを歩くシーンは、パリを舞台にした映画の金字塔と言っても過言ではない名シーンです。
この映画に憧れて、ジーン・セバーグのセシルカットにしたり、ジャン=ポール・ベルモンドが親指で唇を撫でる仕草を真似した人も多いのでは?
ブラッド・ピッド主演の『12モンキーズ』の原案となった映画としてカルト的な人気を誇る作品。近未来のパリを舞台に、過去と未来を行き来する男の幻影を描いた、わずか30分足らずの短編映画。ヌーベル・ヴァーグとはまたひと味違うフランス映画の魅力が詰まっています。
ストーリーはSFですが、いわゆるSF的な美術は使わず、フランス人らしい心理的かつ哲学的な脚本で観る人を映画の世界に没入させてくれます。
リュック・ベッソン、レオス・カラックスとともに「恐るべき子供たち」世代と呼ばれ、80年代から90年台にかけてフランス映画界を牽引したベネックスの出世作。激しくも情熱的な女性ベティ(ベアトリス・ダル)と、小説家を志した気のいい青年ゾルグ(ジャン=ユーグ・アングラード)の愛の日々を描いた物語。当初公開されたのは120分の編集版でしたが、後に60分もの未公開シーンが追加されたインテグラル版が発表されたので、これから観る方はぜひそちらをご覧ください。
海辺の町からパリに移ったふたりが泡沫の幸せな時間を過ごすシーンは、何度観ても「この時間がずっと続けばいいのに…」と思ってしまいます。
アレックス三部作と呼ばれる連作の完結作。その難解さ故にゴダールの再来とも言われた完璧主義の鬼才カラックスが、フランス映画史上最大の費用をかけ、呪われた映画と呼ばれるほどの問題作としても知られています。
映画の舞台はパリで最も古く美しいと言われるポンヌフ橋ですが、交通量が多いことから撮影の許可が降りずに、郊外にパリの街をそっくりそのまま作ってしまったという豪快さで、撮影中に制作会社が二度倒産するなど、『ポンヌフの恋人』にまつわる不幸のエピソードは尽きることがありません。それでもなお、この映画が今でも高く評価されているのは、その圧倒的な繊細さと美しさ故でしょう。
監督のカソヴィッツは、『アメリ』で証明写真を集めていたニノと言ったほうが通じる人が多いかもしれません。実は彼は90年代のフランスを代表する歴とした映画監督。そんなカソヴィッツのキャリア2作目となる『憎しみ』はモンマルトルを舞台にしたヒリヒリとしたギャングたちの青春を描いたクールな白黒映画で、全編にラップやレゲエが流れるなか、ヴィンス役のヴァンサン・カッセルの名演が光ります。
フランス映画特有の陰鬱さと、ウィットの効いた台詞回しや、ゴダールの正当な後継者と呼ぶにふさわしいカメラワークなど、映画好きが絶賛するのも納得の作品です。
全編を通じて特殊効果を使った映像美が独特なファンタジー・アドベンチャー。まるで悪夢を見ているような歪んだ世界を作り出す手の込んだセットと、俳優たちの人間味あふれる演技が魅力的で、後のミシェル・ゴンドリーへと受け継がれていくフランス映画の新しい潮流を作った監督です。
前作の『デリカテッセン』と、この『ロスト・チルドレン』の成功をきっかけに、ジュネはハリウッドに渡りましたが、2001年に再びフランスに戻って監督した『アメリ』は日本でも大ヒットしました。
愉快な仕掛けのセットが満載の作風で知られるゴンドリーが、フランス文学界を代表する作家ボリス・ヴィアンの名作『うたかたの日々』を映像化した作品。
病に倒れる悲劇のヒロイン・クロエを演じるのは『アメリ』で一躍有名になったオドレイ・トトゥ。クロエとコランの摩訶不思議なパリの生活は、幻想的でありながら時に非常にリアルで、夢見る心を失わずに大人になってしまったふたりの切なくも愛おしい物語です。
References & Thanks to
1
1月17日公開
台湾が今人気急上昇。カフェに雑貨に建築に、見どころ満載で何度でも行きたくなる街、台北。そんなアジアのお隣の街に、大阪の老舗雑貨店carbon店主が初めて訪れました。carbonがアジア?そんな先入観を捨てて台北の街に繰り出してみると、そこには思わず納得の魅力がありました。KAMAKULANI特別企画、海外旅行ビギナーのための台北ガイド!
2
11月14日公開
carbonの4年ぶりのフランス遠征はパリから500kmのワインの産地、ボルドー!「フランス人がいま一番住みたい街」とも言われる自然豊かな郊外都市のボルドーは、食べモノがおいしくてとっても長閑な町でした。パリとは一味違う魅力を楽しめるボルドー。この町には深いワインのような魔法的な時間が流れています。
3
12月5日公開
carbonフランスの旅、前回のボルドー編に続いて、今回はパリへ。26年前初めてパリの街に足を踏み入れたときから、きっと色んな運命に導かれて、carbonは谷町六丁目の小さなパリになったのです。今年のパリ遠征ではついにcarbonの生みの親とも言える憧れの雑貨店のオーナーとお話しすることができました!