KAMAKULANI Editorial Desk

編集部

「いつもとは少し違う選択を。」をキーフレーズに、昨日とは少し違った新しい自分を発見できるような情報をお伝えするWEBマガジン「KAMAKULANI」の運営デスクです。

連載中KAMAKULANIのこと

谷町六丁目

たにまちろくちょうめ

大阪市中央区の地名。谷町筋に沿って1丁目から9丁目まであり、特に地下鉄谷町線の駅名になっている4丁目、6丁目、9丁目が知られている。「谷町」は、西に向かって低くなっている上町台地の谷状の地形に由来し、相撲力士の個人スポンサーが「タニマチ」と呼ばれるのは、この土地に相撲好きな医師が住んでいたためとする説もある。

2名前はKAMAKULANI

サイトの名前を考える

KAMAKULANIの原型となったプロトデザイン

WEBマガジンの企画会議は、大阪の谷町六丁目で行われました。谷町六丁目は、キュレーターのデキさんが運営する雑貨店carbonのある場所で、谷町筋から松屋町筋にかけて東西に800メートルほど伸びる空堀商店街を中心に、個人店が数多く点在する人気のエリアです。その日は、梅雨も終わりかけて少し歩くと汗ばむ暑さのなか、サイトの名前のアイデアを持ち寄ってcarbonの近くのカフェに集まりました。

初期のブランド案。当初からシンボルカラーは同じ。

その時点で決まっていたのは、4人のライターが週替りで記事を公開すること。当初考えていたテーマは「空間」「インテリア」「旅」「モノづくり」。WEBサイトなので、シンプルで覚えやすいドメインが取得できることも大切な条件のひとつでした。「観察する」「発見する」「眺める」「刺激する」など、思いつくままにキーワードを挙げ、事前に「Lifely」と「Wonderment」のふたつの候補が挙がっていました。

「Lifely」は「暮らし」や「人生」を意味する「Life」に接尾語の「-ly」を付けて形容詞化した造語です。「人生のような」「それぞれの暮らしの」といった意味合いで、書く人も読む人も、皆それぞれの生き方の中でふらっとこのサイトに立ち寄ってほしい、という思いが込められた名前でした。「Wonderment」の方は「驚き」や「好奇心」を意味する言葉です。より刺激的で生産性のあるコンテンツをイメージしたのですが、どちらも漠然としすぎているし、既にどこかにありそうな名前だということで、もう一度練り直すことにしました。

使われることなかった4つの名前

そして新たに提案されたのは、「谷六通信」「Primp(着飾る、めかしこむ)」「LOTOEO(lay on top of each other = 重なり合う)」「et al. / etalii(〜たち)」の4つ。「谷六通信」は言わずもがな仮編集部の置かれた谷町六丁目の通称から。「Primp」は何もない普通の日に少し特別な服を着て過ごしてみるようなイメージ。「LOTOEO」と「et al. / etalii」はライターが4人いることを意識した名前です。もしあの時この中のどれかに決まっていたら、今とはまったく違った雰囲気のサイトになっていたかもしれません。「谷町通信」は町の瓦版的な、「Primp」ならファッション寄りの、「LOTOEO」や「et al. / etalii」なら会議のたびに誰かが「言いにくい!」と文句を言っていたことでしょう。

この日は、谷町六丁目のパンケーキカフェ「cica」でのミーティング。パンケーキにチョコレートで描いてくれるオーダーアートが評判の店で、リクエストしたイラストが仕上がるのを待ちながら、雑誌や映画や旅の話をしつつ、会話の端々に見え隠れするインスピレーションに耳を澄ませていました。

大阪、鎌倉、そしてハワイ

鎌倉の由比ヶ浜 Photo by Daisuke tashiro

デキさんは当時、鎌倉を拠点にインテリアの仕事を始めたところで、そこでの出会いや経験がきっとこのサイトにも影響を及ぼすことになるだろうと考え、「鎌倉」にちなんだ名前も検討していました。既に決まっていた4つの漠然としたテーマの中でも「旅」のイメージだけは初期の段階からとても具体的で、観光案内のような内容にはせず、遠い土地に移住した人たちの生の声を伝えることで、書く人にとっての日常と読む人にとっての非日常的のギャップを楽しめるようなものになるだろうという確信がありました。

サイトを運営するフクダ・ロングライフデザインは大阪の会社なのでサイトの読者層は自ずと関西中心になることが想定されます。西日本の人たちにとって「鎌倉」という非日常の雰囲気がサイト全体にうまく作用してくれたら…という期待があったのです。

ハワイのHALEKULANI Photo by Alan Light

もうひとつ、デキさんが理想の場所として名前を挙げたのがハワイのホテル「ハレクラニ」でした。ハワイ語で「天国にふさわしい家」という意味を持つこのワイキキのホテルは、創業から一世紀を経た今でもその高い品質のサービスと恵まれた環境で世界中のファンを魅了しています。まるでもうひとつの人生を生きているかのような贅沢なくつろぎの空間を提供し続けるハレクラニは、他のラグジュアリーな高級ホテルとは一線を画す存在感を持っています。

自身でも店舗を運営しているデキさんにとって、ハレクラニのような、特別な存在でありながらどこかホッとできる空間づくりは、常に大切にしているテーマのひとつです。これから始まる新しいサイトにもそんな場所になってほしい。そんな想いが鎌倉とハレクラニを繋げたのです。

鎌倉+ハレクラニ=「カマクラニ」

デキさんの口から出たその名前は、もうそれ以外には考えられないほどピッタリなものでした。こうして2015年の初夏に「KAMAKULANI」という名前のサイトが誕生しました。

名前は贈り物

名前をつけるという行為について、コピーライターの糸井重里さんが以前にこんなことを話していました。

「名前をつける」というのは、なんだか、「プレゼントする」という行為と似ています。意味とか、理由とかは、ほんとは二の次なんです。受け取った相手がよろこんでくれて、思いついたじぶんがうれしい気持ちになれるなら、それが最高のプレゼントになるじゃありませんか。ほぼ日刊イトイ新聞(2011年3月6日)

「KAMAKULANI」という名前は、まさにそんなプレゼントのような名前でした。奇しくもデキさんのcarbonのコンセプトも「贈り物」で、その想いは姉妹店の8HATI(フクダ・ロングライフデザイン運営の雑貨店)にも受け継がれています。

次回は最初の4人のオーサーと、これからのKAMAKULANIについてのお話です。

連載中KAMAKULANIのこと

1

2月27日公開

KAMAKULANIが生まれた日

いつもとは少し違う選択を。そんな日常のささやかな喜びと発見を共有するために生まれたKAMAKULANI。その始まりは、小さなひらめきと小さな一歩でした。なぜ家をつくる会社がWEBマガジンを始めたのか?しかも住宅とは関係のないアートや旅の話題で…。そこにはフクダ・ロングライフデザインの家づくりにかける想いと深いつながりがありました。

2

3月27日公開

名前はKAMAKULANI

KAMAKULANIという名前が決まるまでにはいくつもの案が出されました。そのひとつひとつに意味や想いが込められていて、「もしあの名前になっていたら…」と考えるとこのKAMAKULANIの色んな架空の今が想像できます。でもやっぱり最後には、このサイトのこれからのヴィジョンを象徴するような、これ以上ないピッタリな名前に決まりました。

3

4月24日公開

これからのKAMAKULANI

小値賀町斑島の大原さん、元雑誌編集長の藤岡さん、BL出版の落合さん、そしてフクダ・ロングライフデザインの福田さん。2015年の夏、個性的な4人がKAMAKULANIの最初のオーサーになってくれました。身近な友だちから届く手紙のような文章から、本格的なプロの文章まで、多種多様なのがKAMAKULANIらしいところ。それぞれの分野で精力的に活躍するオーサーの皆さんの活動をKAMAKULANIでは今後もフォローして応援します!