瀬戸内海に面した、香川県でも高松市に次ぐ規模の都市。丸亀城を中心とした城下町で、同じく香川県琴平町にある金刀比羅宮の参道口として古くから栄えた。江戸時代初期に、金刀比羅宮への参拝(金毘羅参り)の土産物として「金」という字を丸で囲んだ縁起物のうちわが作られたのをきっかけに、丸亀市は日本最大のうちわの産地として名を知られることになる。
節電やエコが注目される中、ここ数年では昔ながらの「うちわ」が再評価されつつあります。
ところが身近で購入できるうちわは量産で作られるモノばかりで、中国製のモノが多いのが現状です。
しかし日本には江戸時代以前から作り続けられる国産のうちわがあるのです。
香川県丸亀市で作られる「丸亀うちわ」はすべて手作りのため生産量が少なく一般の方の目に留まる機会は少ないと思いますが、量産で作られるうちわとは、本当に違う風を吹かせてくれます。
そもそも「うちわ」を比べることなんてあまりないと思いますが、是非一度丸亀うちわをお手に取ってみてください。きっとその良さを体感して頂けると思います。
五八PRODUCTSではこの素晴らしい国産うちわの魅力を全国に広めるべく、2009年から「Ogiji」という名前で丸亀うちわを取り扱っています。
丸亀市のうちわの国内で90%の生産シェアを誇ります。しかし街で配られているようなうちわのほとんどは中国産の材料を使ったもので、昔ながらの材料と行程にこだわって作られた生粋の「丸亀うちわ」はごくわずかなのです。
丸亀の伝統工芸に魅せられた作り手の方々はそんな状況をどうにかしたいと考えていました。地元丸亀では、うちわは日常生活の中にある当たり前のモノで、ちょっとしたお出かけの際に持ち歩いたり、車の中などにもうちわの姿が自然に溶け込んでいます。
そういった産地の「当たり前」を何とか全国へ浸透させたい!という思いが積もり、丸亀うちわが五八PRODUCTSのラインナップに加わることになったのです。
「丸亀うちわ Ojigi」の誕生は2009年…いまから7年前の9月に遡ります。
きっかけは、「携帯できる丸亀うちわを作りたい」という地元の作り手の方の一言でした。
うちわは季節消耗品であり、コンパクトに折りたたんで持ち歩く習慣が根付いている扇子と違って、「うちわを携帯する」という考え方は、うちわそのものを浸透させる以上にハードルの高いことでした。そこで私たちは「携帯できるうちわ」という発想を消費者へ浸透させるためには何らかのプラスアルファが要求されるだろうと考えました。
まず「うちわを携帯する」必然性を考えること。
そのためには「携帯する」ことに違和感を抱かせないように、うちわの携帯性を検討する前に、既に日常の中で「携帯されているもの」をピックアップしていくことから始めました。
都心では本や新聞を持ち歩く人が多く存在していることに着目し(今では、スマホ全盛になりましたが…)、そこへ「うちわ」が入り込める要素を付加することで「持ち歩く」シーンを作りだせるのではないかと考えました。
デザインは、本のサイズを意識しスクエア形状の3サイズ。柄=持ち手は、本を読んだページを示す「しおり」の役割も想定しています。
また、会釈するように角度をもった独特の形は、必然的に扇ぐ人とうちわが向き合える方向性を生み出すという機能性に基づいたデザインなのです。これによって、従来のように消耗品として消費されていたうちわではなく、自分とうちわが向き合うことでどこか「自分用」という親しい関係性に気付かされるでしょう。使う人がうちわに対して愛着を持つきっかけを作りだせるようなデザインを意識しました。
扇子とはまた違うシーンを新たに作りだすことで、「うちわを持ち歩く」ことが、持ち主の価値観を周囲に発信できるアイテムになるとも考えました。
これらの内容や取り組みが、2010年度のグッドデザイン賞で「中小企業長官賞」受賞という評価を頂きました。
http://www.g-mark.org/award/describe/36187
丸亀うちわの特徴のひとつが、竹の持ち手です。
「伊予竹に 土佐紙貼りてあわ(阿波)ぐれば 讃岐うちわで至極(四国)涼し」と歌い継がれているように、丸亀でうちわの生産が盛んだった理由のひとつとして、すべての材料が四国四県で揃うという好条件があったようです。「丸亀うちわ Ojigi」でも、作り手自らが丸亀市近郊の竹林に入り、持ち手用の竹を切り出すところから始めています。
無料で配られているものや100円ショップで買えるような安価なうちわは、中国産の竹骨がほとんどですが、中国生産の竹は若い竹を使うので、竹の「しなり」が少なく、パタパタと力任せに扇がなくてはいけないのです。一方で丸亀うちわは、3~4年ものの竹を使うために、竹本来の「しなり」が強く、ゆっくり大きく扇いでも十分な風が生まれます。こういったところにも日本産と中国産の違いは顕著に現れるのですが、どうしても販売価格にばかり目が行ってしまうのは、商品の魅力を十分に伝えきれていないことが原因だろうと思います。
五八PRODUCTSが「問屋」を名乗っているのは、このようなモノづくりの課題としっかり向き合って、産地と消費者をつなげたいと願うからです。
Comment from the Curator
すっかり、消費者の目線で記事を読ませていただきました。丸亀のうちわがどんな風を作るのか、その感触を感じてみたくなりました。ポケットティシュの配布のようにうちわが使われるようになって、安価なうちわがタダで手に入ります。そんな時代にこのモノ作りを次の時代に残せるようにするためできるコトをこんなに丁寧に考えているんですよね。使用する素材のコトだけではなくて、その一扇ぎがつくる風がどんなに贅沢で心地いいんだろうっと想像するだけで、「ojigi」に出合える日が楽しみになりました。
明石大橋を渡って、鳴門海峡を越えて、丸亀に行きたい!!帰りにはさぬきうどんも食べて帰ります。(笑)
References & Thanks to
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1月19日公開
五八PRODUCTSでも多くの商品を扱っている、肥前吉田の陶磁器ブランド「224porcelain(ニー・ニー・ヨン・ポーセリン)」。シンプルだけど機能的なテーブルウェアのSUIシリーズ、本棚に彩りを添えるはなぶんこ、ペーパーフィルターのいらないコーヒードリッパー「Caffé hat」など、五八と共同開発した商品を紹介します。
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2月16日公開
国産うちわの約90%を生産する香川県丸亀市。江戸時代から受け継がれる伝統技術に、五八PRODUCTSの新しい解釈を加えて生まれた「丸亀うちわ Ojigi」は、首をかしげておじぎをしているように見える愛らしい形が特徴です。
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3月15日公開
まるで箱入りキャラメルのようなかわいい石鹸『旅する石鹸』。形にも品質にもパッケージにもしっかりと意味があるのです。企画先行型のモノづくりは、五八プロダクツの新しい可能性を感じさせてくれます。
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4月19日公開
大正時代に長野県で農業閑散期の産業として生まれた「農民美術」。戦後の復興とともに再び復活したこの運動は現在でも地域の作り手の皆さんによって受け継がれています。この長野県農民美術と五八プロダクツの出会いのきっかけとなった木端人形「雪ん子」。その値段には思わず膝を打つ「根拠」がありました。
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5月24日公開
2016年で活動5周年を迎える五八PRODUCTS。産地との関係を重視して、あえて「デザイナー」ではなく「問屋」であることを選んだことの意味を、今改めて見つめ直しています。若い世代に日本の物づくりの素晴らしさを伝えていくために、産地や作り手の人々と消費者の間で五島さんと八木沼さんの挑戦は続きます。