お店への納品が増えてくるたびに「売れるもの」「流行のもの」を作らなければ、という強迫観念みたいなものに縛られる時期が続きました。雑誌をチェックし、雑貨屋さんをチェックし、いろいろな人のブログなどから情報を得ていました。そういう時に作るものというのは、どこかで見た事あるもの、作っていても楽しくないもの、そしてお客さんに媚びるかのように値段も安くつけていました。
とにかく数を多く作ってどんどん売る、ということを繰り返していくなかで心もすり減っていきます。そんな中、なんの縛りもなく好きなものを表現するという展示会を行うことで、私の中のバランスを保っていました。
京都の恵文社一乗寺店というお店で行った展示会での芳名帳にある人のお名前を見つけました。一言、「とっても素敵です!」と書いてありました。その人は東京のお寺で「もみじ市」というイベントを行っている主催者の北島勲さんでした。私は以前から「もみじ市」のブログを熱心に読んでいるファンの一人でした。いつか出たいなあと夢見ていました。もみじ市に出るにはこちらから応募して出るという仕組みではなく、もみじ市事務局が厳選した作家が出るという、才能と運を総動員しても私にはきっと無理だろうなぁというハードルの高さです。芳名帳に北島勲さんのお名前を見つけてから3ヶ月後、「もみじ市に出ませんか」という一通のメールが私のもとに届いたのです。
あの時恵文社で展示会をしていなかったら、あの時北島さんがたまたま東京から京都に来ていなかったら、きっと今の私は存在していないと思います。もみじ市の出店はそれほどに私の人生を大きく変えました。
私が初めて出店した2010年はお寺から多摩川の河川敷に移り、100組近い出店者と規模もぐんと大きくなりました。早朝の緑の芝生を踏みしめた時、憧れの作家さんがすぐそこで開店準備をしている時、キラキラした空気が充満していて本当にそこは夢の王国でした。迷いや不安ばかりの日々に一筋の光が射した瞬間でした。あぁ、私は今光の中にいるなあと。今まで自分が信じてきたことを本気で信じてもいいのだと背中を押された感じでした。もみじ市の魔法にかけられたのでした。
今年のもみじ市は10月14日・15日に開催されました。開催の一ヶ月前から私のもみじ市は始まりました。他の納品などを終わらせて、とにかく集中して作るのですが、なんというか楽しい気持ちしかないのです。売れるものとか流行のものとかそんなことは関係なく、とにかく自分を信じて好きなものを作ることができる場所がもみじ市。この作っている時間がいつもギフトだなあと思います。
自分を信じてもいいんだと思える場所に出会えること。迷うことばかりの日々でも本当に信じたいことは何だろう、本当に見たい景色はどんなだろうといつも自分に問い続けることで出会えた場所なのかもしれません。
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8月29日公開
京都、そして地元の福岡へと活動の拠点を移しながら、自然をモチーフにしたキャンドルを作るnuri candle。どこか懐かしく、でも見たことがないような新しいスタイルのキャンドルはどのように生み出されているのでしょうか?注目を集めるキャンドル作家の魅力に迫ります。
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9月26日公開
父親の転勤を機に引っ越した京都。四季折々の美しい自然や文化に触れながら、生きていることの実感と自己表現に対する葛藤のあいだでひたすらキャンドルを作り続けた日々は、充実した創作活動の時期となりました。
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10月31日公開
求められるものを作らなくてはいけないというプレッシャーから解放してくれたのは、多摩川の河川敷で開催される「もみじ市」への出店の誘いでした。一ヶ月前から準備を始め、集中して自分の作りたいものを作る時間は、nuri candleにとって何よりのギフトとなりました。
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11月28日公開
古くなった蝋燭を砕いてみると、結晶化した欠片が鉱物のように見えた…。そんなきっかけで繋がったキャンドルと鉱物の世界。鉱物をこよなく愛した宮沢賢治の詩集を読んだり、漫画『宝石の国』のキャラクターの公式イメージキャンドルを作ったり、ついには鉱物キャンドルの本を執筆したり。nuri candleと鉱物の出会いから生まれた神秘的な鉱物キャンドルの数々をご紹介。
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12月26日公開
「精油は瓶の中でまだ生きています」この言葉から生まれたのがnuri candleのアロマキャンドル。火を灯すと精油の生きた効用が広がる、まるでお薬のようなキャンドルです。そんな特別なキャンドルが、美しいレリーフに覆われて特別な空間と時間を作り出すことは言うまでもありません。
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1月30日公開
「いつも気持ちをまっさらにして作業台に向かうこと」時には感覚を研ぎ澄ませて、真夜中の絵付け作業から明け方の海辺へと移ろっていくことも。福岡の自然のなかで、今の自分が作りたいものにまっすぐに向き合うことこそが、火を灯した瞬間に魔法が広がるnuri candleの魅力の秘密のようです。連載最終回。